アメリカ市場は「知ってもらう」ことから始まる

 広大で巨大なアメリカ市場へ商品を展開するとき、全米展開している大手小売店に入ることは相当困難な事ですが、ゴールではありません。
 むしろ、そこからがスタートとなります。
 アメリカで「売れている」という状態は、いったいどういうながれなのか?

全米に展開している小売店は店舗数が桁違い

 全米に展開している大手小売店は、例えばウォルマートの店舗数は5000店舗、ドラックストアーのCVSなら9600店舗以上の規模となります。

 ホームセンターのホームデポやローズに関しても、1000~2000店舗の規模となってます。

 このように1000以上という単位の店舗数になります。


 このような企業に商品が入ったら、「1店舗1000個づつ全店に」という少数でも、数百万個単位の規模になります。


 「アメリカ市場で成功した!」

 

 となりそうですが、アメリカ企業にとっては、ここからがスタートとなります。



広く知られていない商品は売れない

 一度、大規模小売店に入ったから、みんなに広く知られると安心してはなりません。

 大規模店舗には、数えきれないほどの商品が並んでおり、数多く商品が入れ替わります。

 

 そんな中に、もしあなたの商品が並んでいたとしても、認知活動をしなければ埋もれてしまいます。

 ましてや、棚の一番下に並べられたら気づくこともできません。

 店員も、あなたの商品だけを特別に売ろうとしたりしてくれません。

 数千店舗全ての店員に周知することができません。


 そうなると、自社でPOPなど用意して目立つようにと考えても、店全体の見せ方は本部で決まっていますので、なかなか手を出せません。


 敏腕営業マンが、交渉を重ねてある一角を取れたとしても、自社で作った棚などのディスプレイの材料費だけでも大変です。

 1棚1万円で作ったとしても数千万円規模です。

 さらに輸送費や組立費も大変な金額となります。

 また、商品が並んで綺麗に見える一角で計画しても、毎日膨大な商品に追われている店員が、綺麗に見えるための補充に気配りしてくれるでしょうか?


 では自社でやってやるといっても、西海岸と東海岸では直線で3900kmあります。車なら4500kmです。毎日1000km移動しても5日かかります。

 自力で、数千店舗をチェックするための交通費や人員は、想像をはるかに超える規模になります。



知らない商品は気づかない

 知らない商品は目に入っても、気づかないものです。

 逆に知っている文字などは、気づきやすくなります。

 

 例えば、ホールフーズで売っている「スシ ライス」ですが、日本のお米はアメリカ人が知っている食べ物である「スシ」用のお米として並んでいます。

 これは、アメリカ人に分かりやすいような表現にしてます。

 

 今日は家でお寿司を作ろうと考えた時、選ぶのは「スシ ライス」です。

 家でお米を毎日食べないアメリカ人にとって、どのお米がお寿司をする時に買って帰ったら良いかを、分かりやすくしてます。


 日本人にとっても、Sushiと書かれていたら目に付く事でしょう。


 また、今の情報が入った皆様なら、ホールフーズの棚を見た時に、「あっスシライス!」と、数多くのお米の中に埋もれていても一目で発見できます。

 これが、商品を知ってもらっているということです。


 この写真の中で知らない商品は、何が入っているかがイメージ出来ないため、手に取らないかと思います。

 数秒間の認知の場合、知っている商品に目が行き、その周辺の商品が目に入りにくくなります。


 知っているか知らないかの単純な話ではなく、アメリカ人にとって良く知られている商品の中で、知られていない商品を売る難しさがあります。



地道な周知活動

 店舗に入る前も後も、地道な周知活動が必要です。

 今までアメリカに無かった商品だと、アメリカ人は知らないため、調べる事もしないでしょう。

 ホームページだけでは、検索すらされないという状態です。


 そこで、積極的に知ってもらう活動でSNSが必要です。

 これも、飽きさせず見てもらえる内容を、毎日更新するという地道な努力で、商品のランディングページに誘導していきます。

 お客様がページにランディング(着陸)してくれても、興味をそそるページでなければ、一瞬で離脱します。


 そうなると、もう二度と着陸してくれません。


 周知活動を帰しする前に、アメリカ人が興味を持つ企画とデザインと内容など、様々な地道な準備が必要です。

 

 興味をそそる内容に仕上げたSNSも、1人に興味持ってもらうために1ドルかかるとして、100万人に興味もってもらうには100万ドルの広告費です。

 1回のオーダーで数百万個いれても、知っている100万人すべての人が購入してくれるわけではありません。

 つまり、それ以上の人数に知ってもらわないと、大手小売店の売上状況を判断するAIは、「売れていない商品」と判断するかもしれません。


 膨大な数の商品が売れ筋かどうかは、店員の感覚ではありません。AIの自動判断です。

 自動で判断されたら、商品はどんどん棚の隅に追いやられ、いずれ棚落ちです。


 広告宣伝に費用をかけられないなら、長い時間をかけて地道な周知活動が必要です。

 全米にある程度の人数に知ってもらった時に、大手小売店の棚に並べる必要があります。

 タイミングを間違って、周知されていない段階で大手小売店に入ると、AIがすぐに棚落ちさせます。そこには感情がありません・・・


 まず初めに、準備と地道な周知活動です。大手小売店に話しをし始めても、棚に並ぶのは1年から2年後です。大手ほど商品の切り替えには時間がかかります。


 その時のタイミングを逃さないために、全米への周知活動という、泥臭いブランディングが、アメリカ市場には必要です。

 

M-Cross International Corporation Column

米国トーランス市に拠点を置くMCICが、米国進出のノウハウや独自の市場分析をコラム形式にて情報を掲載

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