商品を発信しにアメリカに行こうとしてないか?

アメリカマーケットにアメリカ国外企業が参入する場合、ほとんどの企業がアメリカでは無名です。無名企業の無名ブランドを市場に認知してもらうためには相当な時間と費用がかかります。
市場に認知されていない企業名を発信する労力と費用をできるだけ抑えるため、国名ブランドでなんとかしようとする企業が多いように感じます。日本だと「メイドインジャパン」というブランドに頼り、商品が高品質・高機能であることを前面に発信しようとします。中国ですと「メイドインチャイナ」で品質や機能の割に安価という発信も同じです。
今のアメリカは、商品ブランドの時代ではないため、製品をマーケティングするというやり方では、アメリカ市場で新規参入商品は苦戦します。アメリカ企業も大量生産品を広告宣伝をかける商品ブランド化手法がアメリカ国内で通用しなくなってきてアメリカ市場で苦戦し始めてます。

企業の目的は?

 マーケティングという言葉は、ブランディング活動や販路開拓という個別活動の意味だけではなく、もっと幅広くとらえた「企業活動」と考えます。そのため、マーケティング戦略は、企業活動のための戦略となります。

 では企業活動するときの「企業の目的」は何であるかを改めて考えなければなりません。ピーター・ドラッカー氏は「企業の目的は、顧客の創造である」と主張してます。商品が顧客を創造することは、企業の顧客創造の一部の行為です。商品ではなく企業がアメリカ市場で顧客を創造しなければなりません。

 企業自身がアメリカ人顧客を惹きつけて、成長させてゆく活動が、マーケティング活動の本質のように思います。


商品を中心にしたアメリカ展開は失敗する

・広告宣伝をかけて商品をアメリカ人顧客に知ってもらう。

 商品をアメリカ市場で知ってもらうために、TVや雑誌、今の時代ではGoogleやFacebookなど広告宣伝をかけて、商品を知ってもらうやり方です。この手法の前提に「商品さえ知ってもらえれば必ず売れる」と売り手側は考えがちです。この売り手側の期待値は買い手側が思うより高い場合が多いです。売り手側はその商品が良く分かるプロフェッショナルですが、買い手側はその他大勢の商品のうちの一つに、そこまで興味が湧かないでしょう。

 それなのに多くの企業のFacebookやInstagramでは、商品の事ばかり伝えようとします。ひどい場合は、商品が一つしかないのに、毎日写真を変え、説明文を変え、たまに商品の動画を入れたり・・・

 見る側はもう永遠ループするビデオを見させられているような、無限地獄に入ったかのような、そんな感じになります。

 世の中には多くの情報が溢れていて、人の脳の処理能力を超えるほど毎日新たな情報が入る時代に、人々は無駄な情報に時間を割きたくないものです。

 それなのに、「こんな機能あります」「またこんな機能もありました」「さらにこんな機能もあるのですよ。すごいでしょ」の連続技は、退屈攻撃でしかありません。それでも、同じ商品を様々な角度や様々な場所で撮った写真をFacebookに載せ続けるページよりマシです。これは他人の子供の写真を見さされ続けるくらい、退屈なコンテンツになります。

 自分の子供のように大切な商品かもしれませんが、顧客を無限ループに入れてしまうのは罪です。


企業を中心にして発信する

 商品を発信するのではなく、企業を発信しなければならない時代に入りました。

 アメリカ市場で顧客開拓するには、企業はアメリカを今より良い場にすることを発信しなければなりません。その商品が良くするのではなく、企業が良くするという発信です。企業のミッションやビジョンもそうですし、アメリカ市場に存在する価値もそうです。

 そういった姿勢が理解され、商品が市場に展開していきます。

 例えばスターバックスですが、性別、人種、民族性、性的指向、障害、宗教、年齢だけでなく、文化的背景、生活経験、思考やアイデアにおいても多様な場を作る事を発信してます。更に2022年までに10,000人の難民を雇用する約束も発信してます。これはスターバックスという場が、一歩先の理想的な場を作っていこうという想いが発信されてます。

 そのため、その理念と異なる事態が起きた時は、いち早く皆に謝ります。

 より良き社会へを作るため、より良き場を自ら先導して作り上げる姿勢は、自己実現の欲求の段階へと進化してます。こちらはパートナー(従業員)の学士号取得を支援するプログラムです。

 スターバックスの商品は、コーヒーやフラペチーノだけですが、コーヒーの写真ばかり発信してはアメリカ市場でここまで成長できなかったでしょう。社会に対して理想の場づくりを目指す努力や想いが、新たな顧客を創造して企業が成長できます。

 そのような企業が市場に新商品を展開する場合、顧客は「良い商品に間違いない」と無条件に感じます。このイメージが勝手に企業のブランドイメージを作り上げます。

 これが、今のアメリカ市場にマッチしたマーケティング手法の一つです。マーケティングは顧客を創造することなので、企業を好きになってもらう顧客をどのように創造するかが、企業の見せ所になるのではないでしょうか。

 アメリカ市場で市民から「無くならないで」と言われる企業になることが、顧客を作り出す最新のマーケティング手法になります。

 

 アメリカ市場へ進出する企業が自ら、アメリカ市民に対して企業をプレゼンすることが大切です。新聞に高い費用を支払い公告を掲載しなくても、ホームページやSNSでいつでもどこへでも市民にプレゼンできる機会があるのが、今の時代の良いところです。

 日本は、世界の中でも特に真面目で紳士的で社会の事を考えている企業が多いと思います。それを発信してほしいのです。語らずに察することは日本人にはできるかもしれませんが、アメリカ人にはできません。

 そして、失敗した時の企業の葬られ方がすごいのが日本市場だと思います。特に嘘をついた場合の市民からの攻撃は凄まじいものがあります。そのような市場で鍛えられている日本企業はアメリカ市場で、理念や姿勢を発信すると共感を得られると考えます。

 品質の良さではなく、ユーザーが困らないように品質の良い商品を作り上げる企業風土や姿勢をもっと発信した方が良いと思います。


 まだ商品の良さばかりプレゼンしようとしてませんか?

M-Cross International Corporation Column

米国トーランス市に拠点を置くMCICが、米国進出のノウハウや独自の市場分析をコラム形式にて情報を掲載

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