アメリカ市場の戦略研究(プリウスで考察するアメリカ市場)

ハイブリッド車が増加した頃は、プリウスだけが人気であった。
当時の状況を考え、アメリカで売れる理由を研究する。

 自動車はほかの製品と異なり、家計において大きな支出となります。

 そのため、他の家電製品と異なり、自動車は保有することに対して周囲に対して強烈なシグナルを発する製品です。

 アメリカハイブリット自動車市場において、様々なハイブリッド車がある中で、なぜ全体の約半分を占めるようになったのか?

 これは経済学者の中でも様々な研究対象になってます。

 今回はそれらの研究内容から、『アメリカ市場で売れる』理由を探ります。


■日本とアメリカの違い

 日本においてプリウスは、燃費が良いから売れている。そんなイメージを持っているのではないでしょうか。

 事実、日本ではストップ&ゴーの繰り返しが多く、減速時における内臓モーターでの発電により、スタート時においてエンジンの燃料を多く使う部分をモーターで加速することで燃費を良くしている。


 しかし、アメリカではフリーウェイでの一定速度での運転が多く、エンジン運転が多くなり、重いモーターを乗せた車となる可能性が高い。

 ハイブリッド車によるメリットが少ない国となります。

 それなのになぜプリウスが多く売れているのでしょうか?


■なぜハイブリッド車の半分のシェアを取れたのか?

 ハイブリッド車によるメリットが少ないように思えるアメリカで、ハイブリッド車が売れている理由は一体何なのか?

 

 車は強烈なシグナルを周囲に発する製品です。


 日本でも車は「愛車」と言いますが、「愛冷蔵庫」や「愛電子レンジ」とは言いません。

 これは、車という製品が周囲にシグナルを発するモノであるからだと考えます。


 強烈なシグナルを発する製品とは、自分が他者に伝えたい何かを発するという事と言えます。

 高級車に関しては、ブランドのバックや時計や服などが近いシグナルと言えます。

 

 つまり、周囲からどのように見られたいか?

 

 これが購入動機となります。

 では、ハイブリッド車が放つシグナルとは何でしょうか。

 

 ハイブリッド車は、通常のエンジン車より少し高価になります。

 そして、環境負荷を抑えています。

 この事からも、ハイブリッド車が放つシグナルは『金銭的代償を払っても、環境の事を考えている』という事かと思います。

 そしてそのような車をわざわざ選択したのだというシグナルが、ハイブリッド車にはあります。

 

 この、わざわざ選択したのだという事と、アメリカでは燃費性能を最大限発揮できない事との双方に着目すると、環境保護するための『浪費』ができるというシグナルと言えます。


 そこで新たな疑問が生まれます。

 なぜプリウスなのか?

 という疑問です。


 同等性能のホンダのシビックや、同じトヨタのカムリにもハイブリッドがあります。

 この理由として、シグナルは強烈な方が良いという事が考えられます。

 つまり、プリウスはエンジンタイプが無く、一目でハイブリッド車とわかる製品であるからです。

 これは、周囲に強烈なシグナルを発する事ができます。


■地位ではなく個性を表す

 浪費は地位を表すシグナルとなります。

 浪費にのみ着目すると、高級車を選択する事になりますが、ハイブリッド車は浪費のみを表す製品ではありません。

 環境保護のために浪費できるという、浪費するための社会的理由が存在します。


 この理由は社会に貢献するという個性を示します。

 

 アメリカの環境への関心が高い地域であればあるほど、ホンダのシビックハイブリッドよりトヨタのプリウスのシェアが増加します。


 環境を考えていて、そこに費用をかけるという個性を、一目でわかる表現として発したい欲求が、購入動機となっていると考えます。


 セクストンの研究では、自分が環境問題に関心を持つ人間だということを周囲に知らせるだけのために、いくらまでなら費用を払うかを調べた。

 するとプリウスのシグナルは、7000ドルの価値があった。

 この貨幣換算される価値と、製品価格差のバランスにより選択される時代であると考えます。


■シグナルを何にするかを考える

 ほかの製品でも同じことが言えます。

 個性を示すシグナルを、製品がどのように放つかで売れるか売れないかが決まります。

 ただ安価なだけでは商品は売れなくなってくることでしょう。


 ブランドは1000年以上前に誕生しました。

 それは、市場が形成されていく中で、粗悪な製品が多く出回る中で、品質の良さを示すものが無かったからです。

 高価だけれども品質が良いという証明がブランドの誕生です。


 今の激変の時代に、品質が良いというだけでは製品は売れないということは、プリウスが証明しているものと思います。

 ホンダの車も日本製という品質の良さを示していますが、個性というシグナルを発するのはプリウスでありました。

 さらに車のデザインだけで購入する時代ではないこともわかります。


 かっこいいデザインかつ高品質が売れていたのは、過去の時代の事と言えます。


 シグナルを何にするのか?

 そのまえに、これは知識階層の流れであるという事です。

 高級スーツを着て出社する大企業ではなく、Tシャツとジーンズで出社するシリコンバレーの大企業の知識職業階層の流れということです。

 この人たちの発したいシグナルが何なのか?

 

 これを追及する製品開発の議論が重要になってきています。

M-Cross International Corporation Column

米国トーランス市に拠点を置くMCICが、米国進出のノウハウや独自の市場分析をコラム形式にて情報を掲載

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