アメリカ進出の戦略をどのように考えるか?

アメリカ進出の戦略をどのように考え、どのように遂行するのかが、アメリカ進出の成否を分けます。

 アメリカ進出を実施する前に、戦略を立てていなければ、闇雲に行動することになり無駄に資源を浪費して、アメリカ進出は成功しません。

 アメリカ市場に展開している様々なアメリカ企業は、それなりにアメリカ市場で経験値と関係性を既に保有してます。

 そのような市場に、新参者かつ他所者の日本企業が戦略無しに突き進んだとしても、時間と人員を浪費をするだけで、当初思い描いた成果を満たせない結果と成り、アメリカ進出が失敗に終わります。

 そのため、今回はどのような戦略でアメリカ進出の戦略を立てて実行するのが良いのかを考えてみたいと思います。


■有名なビジネス戦略は使えるのか?

 戦略で先ず思いつくのは、最新のビジネス戦略論です。

   ビジネスにおける戦略は様々あります。

   しかし、ビジネス戦略は大企業向けのものが多く、実際のところ中小企業に適用できるものが少ないのではないか?と我々は考えます。

 その理由は、ビジネス戦略を創り出す側は、将来において顧客でなるであろう企業に展開(特にコンサル展開)して、利益を得ようとします。

 そのため、大企業に的を絞ったビジネス戦略が利益を最大化することができ、それゆえにビジネス戦略は自ずと大企業向けになってしまいます。

 

 また、最新のビジネス戦略は欧米が中心で、日本語に変換されるような書籍になるためには、戦略は余程のこと欧米で目立ったものでなければなりません。

 そのため、欧米の大企業を戦略で変えたなどの実績が、日本語化される書籍では有効になります。


 また、ビジネス戦略が進んだアメリカでは、小企業の定義が以下のようになります。

 ・製造業・鉱業:従業員500人以下

 ・小売業・サービス業:売上高600万ドル以下

 ・建設業:2850万ドル以下

 ・金融・保険業:純資産1億5000万ドル以下

 常時使用する従業員が300人以上を大企業と定義する日本では、アメリカでは小企業となる日本の大企業も多々あるかと思います。

 いわゆる有名なアメリカのトップ企業となると、日本のトップ企業の規模の比ではありません。

 

 そのような企業をターゲットにして生み出された最新のビジネス戦略は、日本の中小企業で使いこなすには困難であると考えます。


 今までの有名なビジネス戦略の概要をざっとまとめると、こんなにあります。

 文字が見えないので一部拡大すると、こんな感じです。

   (この弊社のまとめたビジネス戦略概要一覧のPDFが欲しい方はinfo@mcrossintl.comまで連絡下さいませ。)

 実際、中小企業のアメリカ進出において、これらの有名な戦略が、どのようにアメリカ進出で活用できるのか疑問です。


■戦略は軍事戦略から生まれる

 日本企業にとって、アメリカ進出は遠隔地の攻撃戦です。

 そのため、戦略は古典ではありますが、戦略の本質を唱える軍事戦略が参考になると考えます。


 ~戦略の歴史~

 戦略は2500年前の「孔子」からと言われてます。

 勝つことが目的であって、戦うことが目的ではないという考えから戦略は始まり、この戦略により、小が大に勝つという逆転戦略の基本となりました。


 次に人心掌握戦略で有名なニコロ・マキアヴェリの君主論により、正しい目標を皆に掲げて人を動かす考えが戦略になりました。

 

 そして、独自の戦争論を組み立て、科学としての戦争の研究に道をひらいた、カール・フォン・クラウゼヴィッツが、現代の戦争理論を生み出しました。


 更にそこから、間接的アプローチ戦略で有名なリデル・ハート、状況適応戦略のウィリアムソン・マーレーへと戦略の進化は続きます。


■クラウゼヴィッツの戦争論から戦略を考える

 プロイセンの将校だったカール・フォン・クラウゼヴィッツ(1780~1831年)は、戦争における活動を「手段を準備する活動」と「準備された手段を使用する活動」に区分しました。

●「手段を準備する活動」

 これは「戦闘力の創造」、すなわち軍事力の建設・維持、兵士の徴募や訓練、兵站などの後方支援という内容です。

 ・軍事力の建設や維持は、アメリカ進出ビジネスで言い換えると、アメリカにおける拠点や組織の創出と言い換えれます。

 ・兵士の徴募や訓練は、同様にアメリカでの人員確保や人材教育と言えます。

 ・兵站などの工法支援は、物流や商流をアメリカで作ることでしょう。


●「準備された手段を使用する活動」

 これは、いわゆる戦略や戦術です。

   そのため、アメリカ進出で言えば、進出においての市場戦略を、実行時の現場の戦術で販路開拓すると言い換えれます。


 この戦略や戦術とは、混合しがちですが、実は全く異なる機能です。

・戦略は、全体的・長期的な視点から計画・準備・実行する方法といういみです。

・戦術は、個々の戦闘の実行方法という意味です。

 つまり、アメリカ進出の全体的な計画を策定して、その内容を準備して、実行させるという一連の流れにおいて、その流れにおける区分を意味します。

 その区分の一つが、各実行段階に移行した時の作戦方法が戦術となります。

 

 アメリカ進出で言いますと、アメリカ進出戦略⇒アメリカ市場営業戦術⇒アメリカ市場販路開拓といったイメージとなります。


 戦術のイメージとしては、商品を小売店に新規展開の営業をかけるときに、既にその小売りに入っているアメリカメーカーに対して、どうやって棚を取るかと言った、実行段階の方法となります。


 攻撃と防御で区分しますと、既にその小売店に陳列されているアメリカメーカーは、防御戦となります。

 そして、新規開拓のこちら側は攻撃戦となります。

 防御は攻撃よりも、格段に優位と言われています。

 クラウゼウィッツの提唱では、防御1人に対して攻撃3人以上かかると言われています。

  そのため、防御戦により耐えて、外交交渉を有利にすべきと唱えられるほど、防御戦は有利です。

 既にアメリカの小売店に展開しているアメリカのメーカーが防御側であり、かつ物流と商流をアメリカで保有しているためロジスティックという兵站で考えても、圧倒的に有利です。

 そこに対して、限られた戦力しかない日本企業のアメリカ進出は、圧倒的に不利な状況になります。

   ではこの戦いに対して、我々はどのように知恵を絞り込み戦うのか。

   これが戦略になります。


■この不利な状況をどうするか?

 この攻撃側といった不利な状況に対して考えられる戦略は、

●選択と集中

 攻める場所を選択して、エース商品や保有している人員を集中させて突破する方法です。

●間接的アプローチ

 敵が十分備えている正面の攻撃を避け、備えが薄い部分を攻撃する、あるいは間接的に相手を無力化する方法を選ぶ方法です。


 選択と集中はイメージしやすいと思います。

 アメリカに進出させるエース商品を、少ない人員と米国関係者をフル活用して、新規販路開拓を一つ一つ地道に広げていくやり方です。

 これは日本企業によくありがちな、数多くの商品を、いろいろな場所に展開する幕の内弁当のような日本的な考えをしていては、防御側有利の法則で、アメリカ企業に勝つことができません。


■リデル・ハートの戦略論から攻めの戦略を考える

 相手の強みと正面衝突せずに勝利する、リデル・ハートの間接アプローチの戦略論は、この不利な状況を打ち破る戦略論として、とても参考になります。

   アメリカ進出という日本企業が遠隔地のアメリカ市場の進出に対して、攻め側が如何に戦略を立てて勝つかという理論のため、アメリカ進出における日本企業の参考になります。


 リデル・ハートは戦争の原則をひとことで言うなら、「弱点に対する力の集中」だと述べてます。

 

 これは、規模の大きい企業ほど製造や仕入れコストが下がり価格優位な中、中小企業が価格で競争するのは、敵の防衛が一番充実している「低価格・低コスト」に闇雲に突撃しても、負けるだけです。


 間接的アプローチ戦略で考えると、自分用の買い物では低価格しか買わないけれども、子供やペットのためには高額な買い物をします。

 そのため、これが大企業があまり参入してなければ、巨大な防御壁を持っている中心を避け、弱点に対する集中が効果を発揮します。


 この間接アプローチ戦略論の積極面6か条は、アメリカ進出において参考になる事でしょう。

〜積極面6カ条〜

①目的を手段に適合させよ

 達成する手段を目的に掲げても無意味です。

 手持ちの手段から目的を定める冷静さと合理的な判断が、不可能を可能にします。

②常に目的を銘記せよ

 手段を選ぶときに横道に反れたり、最終的な目的とは関係ない目標を追いかける事がよく起こります。

 常に最終目標へどんなプラスがあるかを確認することが重要です。

③最小予期路線を選べ

 相手の立場に立って、ライバルのアメリカ企業が予測する事を、こちら側が予想する事が、攻め側として効率的な道を選択できます。

 これは、商品企画を含めて重要な戦略になります。

④最小抵抗線に乗ぜよ

 ライバルアメリカ企業の最も抵抗が少ない場所を攻めるべきです。

   相手側から受ける抵抗力は、作戦のスムーズな進捗を邪魔します。

⑤予備目標への切り替えを許す作戦線をとれ

 我々のアメリカ進出の狙いが悟られず、相手側がこちらの作戦に対して絞り込みが出来なければ、ライバルのアメリカ企業は我々の邪魔が出来ません。

 我々が少なくとも2つの目標を立てると、ライバルのアメリカ企業は、我々を邪魔する時に、邪魔する的が絞れません。

   作戦を2つ以上持つ事は、我々の攻め側の幅を広げるだけでなく、相手側を混乱させる事が出来ます。

⑥計画および配備が状況に適合するように、それらの柔軟性を確保せよ

 第一回目の作戦実行の結果から、その状況に適する形で計画を素早く、臨機応変に今後の作戦を変更するという、柔軟性を持った組織にすること。

 売れた商品はすぐに増産して、売れない商品は素早くやめるという柔軟性は、大手企業が出来ない素早さのため、中小企業の進出のチャンスを広げます。


 これらの事を考慮して、アメリカ進出の戦略を立てると、より効率的に、より合理的に進める事ができます。

 我々は攻め側であること。

 本拠地から遠いアメリカという遠隔地戦であること。

 このことは、不利な状況ですが、知恵を絞った理論的な戦略で、合理的な戦術で実行することが、アメリカ進出を成功に導きます。


   戦略の失敗は、戦術ではカバーできません。
   そのため、アメリカ進出の戦略立案は、アメリカ進出において大変重要です。

   正しい戦略は、アメリカの大企業に勝つ事が出来ます。

   日本企業の得意とする頭脳を、最大限活用するためにも、アメリカ進出の成功は、進出時の戦略立案が成功の成否を分ける重要な要素と言います。

M-Cross International Corporation Column

米国トーランス市に拠点を置くMCICが、米国進出のノウハウや独自の市場分析をコラム形式にて情報を掲載

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