地政経済学による米国の位置づけ

 地政経済学の視点で米国という国家の戦略を読み解く

■自由主義の世界秩序

 米国の世界戦略を貫く論理は冷戦後も不変で、自由主義な国際的枠組みを構築することである。

 この戦略を世界に影響を与え続けることができるのも、米国は世界で唯一のスーパーパワーを手に入れた為である。

 米国はリベラルな覇権国家である。


 こういった米国が普遍的価値の原則のチャンピオンとなった理由は、地理的な環境と関係がある。

 米国は海に囲まれ世界と隔絶しているという地理的要因があるからだ。

 つまり、米国が世界とアクセスするには、世界が貿易や外交で開かれていなければならず、それに合わせて米国自身も開かれていなければならない。

 

 これが、世界各国に対して貿易、外交と自由主義を押し付け、自国も自由主義を貫く理由である。

 米国はある意味で島国といえる。

 その島国はあまりにも大きな土地を持ち、巨大な島を維持し発展するためには、世界中と貿易と外交をしなければならない。

 

 しかし、米国は世界の主役に安定して位置付けるほど大きな土地を持っていない。


■歴史の回転軸

 世界の覇者としての権力を維持する時に、世界の歴史では覇権を取るときの回転軸が存在した。

 1900年代の英国は、7つの海に歴史の回転軸を置き、圧倒的なシーパワーによって世界の覇権国家となった。

 これは、1904年に王室地理学会において発表された論文「地理学からみた歴史の回転軸」に書かれているものである。

 陸上輸送を馬やラクダなど動物に依存していた時代に、圧倒的な海上輸送能力を持ったものが世界を制したのは当然の考えと思える。

 

 しかし、技術革新により鉄道や自動車など、海上輸送を遥かに上回る大量輸送が可能になった時代では、シーパワーからランドパワーが覇権を取る重要な要素となった。


 シーパーワーからランドパワーへの移行である。

 この時、海から陸へ覇権を取るための歴史の回転軸が移動した。


 このことは、歴史の回転軸中心は最大の大陸であるユーラシア大陸が回転軸中心になることと言える。

 

 戦時中、この回転軸中心を取る可能性のあった国家が、ドイツ、ロシア、そして中国の一部と海洋に領土を拡大する当時の日本であった。


 米国は当然、海に囲まれユーラシア大陸と陸上で繋がっていないアメリカ大陸の国家でり、ユーラシア大陸にてランドパワーを生かせない。

 これは、ユーラシア大陸にある歴史の回転軸中心を取る事ができないということである。


■米国の戦略

 米国が覇権国家として君臨するためには、ユーラシア大陸に巨大な国家ができないよう、封じ込めなければならない。

 米国は自由主義を元に世界への貿易や外交をしなければ巨大な国家は維持できない。


 このことを考えると、戦後の米国戦略もシンプルに見えてくる。


 ソビエト連邦との冷戦は、上記の2点を防ぐための戦いだったと見える。


 そして、ソビエト連邦崩壊という冷戦に勝った後も、米国の世界戦略は続けなければならない。

 このユーラシア大陸にない米国がグローバルな超大国として維持発展し続けるためには、東アジア、中東、東ヨーロッパなどを統一する巨大な国家が生まれてはならず、更にそれらの地域が小国のまま安定し、かつ自由主義にて維持し続けなければならない。


 この自由主義を世界により多く浸透させることが、米国の経済の発展にもつながる。


 しかし、この自由主義による貿易や外交は、ある一定の決められたルールの枠内で行わなければならない。

 このルールに当てはまらない国家には徹底的に対応する。

 これが、冷戦以降の最も重要視している米国の世界戦略と思われる。


 米国はアメリカ大陸という世界の地理上、自力で覇権国家になることができない。

 米国が世界の覇権を維持するためには、ユーラシア大陸をコントロールし続けなければならない。

 しかし永遠にコントロールをし続けるわけではない。

 一連の戦略を組みたて、ある程度のゴールを国家戦略で決めていると思われる。

 つまり、コントロールする地域に順番を設けているのではないか。


 冷戦後、中東地域にその米国の方針に背く国家がイラクだったのかもしれない。

 これは、冷戦後の世界戦略の第一番目を中東地域においたのであろう。

 これからは、東アジアにおいても、そのルールに反する国家への米国の徹底的な対応が、米国世界戦略上重要になってくるもとの予想される。


 引用文献【著:中野剛志「地政経済学序説」】

M-Cross International Corporation Column

米国トーランス市に拠点を置くMCICが、米国進出のノウハウや独自の市場分析をコラム形式にて情報を掲載

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