アメリカペット市場の現状

 アメリカではペットショップでの生体販売を禁止していると言われてますが、一部の市の条例のため全ての地域まではまだまだカバーしてません。
 条例より上位の州法で、カリフォルニア州は2019年1月1日より、ペットショップで販売される犬、猫、ウサギは全て保護施設から入手したものでなければならないとなりましたが、州法より上位の連邦法にまで達するにはまだまだ時間を要する事でしょう。

 着実に変わりつつありますが、現状はどのような状態なのか、ミシガン州立大学ANIMAL Legal & Historical CENTERに掲載されている2017年に発行された「Detailed Discussion of Commercial Breeders and Puppy Mills」(商業ブリーダーと子犬工場の詳細議論)の内容より記載致します。[https://www.animallaw.info/article/detailed-discussion-commercial-breeders-and-puppy-mills-0]

犬の繁殖は政府の監視がほとんどない

 アメリカでは現在でも犬の繁殖は、政府の監視がほとんどなく、かつ2018年は$73.13billion(APPA調査見込み値)に達するほど大きなペット市場の中で、大きなビジネスとなってます。

 そのため、他のビジネスと異なり、緩い規制の中で簡単に収益を最大化させるため、暴利を得る人たちに今でも還元されている現状があります。

 全米で約10,000のパピーミルと呼ばれる子犬工場があり、毎年2,400,000頭を超える子犬が生産されています。

 この10,000工場の内、USDA(アメリカ合衆国農務省)によってライセンスが与えられているのは2,000~3,000工場だけです。

 ライセンスが与えられていない工場での犬たちは、鶏小屋のように垂直に積み上げられた金網小屋の中で生活して、遺伝的疾患を考慮せず交配を繰り返すなど、商業ブリーダーは悪い評判になってます。

 単純に免許を与えていないブリーダーの割合が多いにも関わらず、政府の規制や行政の監督を怠っている状況となってます。


商業繁殖と子犬工場

 パピーミル(子犬工場)という用語は、動物福祉活動家によって「犬を不十分に扱う商業的育種事業」を指す造語です。そのため悪い意味合いでの言葉となってます。

 裁判所では「経費を低く抑え、利益を最大化するために、犬の健康を無視する犬育種事業›と定義してます。

 品種の増強を主眼に置くhobby breeders(ホビーブリーダー)や、ライセンスを得て犬に適切なケアをするcommercial breeders(商業ブリーダー)とは異なり、Unscrupulous breeders(悪徳ブリーダー)は、自分たちで子犬工場の条件を作り出す事ができます。

 生産効率を最大化させるため、積み重ねたワイヤーケージに犬を収容して工場の空間内を密にし、犬に提供される食物または水の量や質は健康を考慮されていない環境となります。

 この悪徳ブリーダーがなぜ無くならないかというと、連邦政府や州の規制執行機関の能力をはるかに超える膨大な数の悪徳ブリーダーがいるためです。


ペットショップが最大のセグメントではない

 全米に展開しているペット関連小売店のペトコやペッツマートなどは、犬や猫の生体販売はしてません。

 このような悪徳ブリーダーはペットショップが最大のセグメントではありません。

 インターネット上で子犬を販売する責任あるブリーダーがいる一方、オンライン子犬工場の不正が後を絶ちません。それは悪徳ブリーダーの販売先となっているからです。

 子犬販売者の評判を掲載するようなホームページの会社とグルになり、売り手側(工場側)の評判を下げる否定的なコメントは削除するなど、詐欺的な戦術を行ってインターネット上で販売しているところもあります。


州法

 この状態に対抗するため、アメリカでは様々な法律で対抗してます。

■商業繁殖法

 商業ブリーダーに関する法律で、多くの州は連邦法のAWA(動物福祉法)とUSDAが要求する最低限のケア基準を超えるように法律を制定してます。少なくともいくつかの法的な追加要件を有しており、そのような法律がない州は2008年24州→2014年21州→2017年16州と、着実に減少しています。


■子犬レモン法(Puppy “Lemon” Laws)

 犬の購入のための「レモン法」は、特定のタイプの州法です。

 現在、20以上の州で、購入後一定期間内に病気になった犬の払い戻しや交換を行える法律があります。

 カリフォルニア州では、購入価格の150%までの払い戻しと獣医費の払い戻しができます。

 この法律は直接的に悪徳ブリーダーを取り締まる事はできませんが、間接的に子犬の健康状態や遺伝子疾患が無くなるよう予防的な法律となる可能性があります。


■ペットショップ法

 ここ数年、いくつかの州で新たな傾向として、ペットショップを規制する法律です。

 子犬を売るペットショップを規制している州は

 ・アリゾナ州

 ・コネチカット州

 ・ルイジアナ州

 ・ニュージャージ州

 ・オハイオ州

 ・ヴァージニア州

 これは、販売側のペットショップは資格あるブリーダーから調達した子犬のみ取り扱え、違反に対する罰則の主は金銭的罰則です。

 しかし、これからは実店舗のペットショップではなく、インターネット上の店舗も取り締まらなければなりません。


最近の動向

 カリフォルニア州はペット救済措置法(AB485)が制定されました。AB485はペットシェルターから入手されない限り、犬・猫・ウサギの販売を禁止する法律です。

 この法案の反対票は、AB485が「倫理的な規制が、厳しい小売業を閉鎖的に追い込む」などの理由がありましたが、可決され2019年1月1日より施行されます。

 反対派は2017年初めに、ニュージャージ州知事のクリスクリスティーにペット購入保護法(SB3041)を拒否するように促しました。

 いくつかの抵抗はありましたが、アメリカは着実に変化をしてます。

 カリフォルニア州やニュージャージ州など、全米の一部の州は、このような悪しき市場慣習を鎮圧するための厳しい法律を先導していることは明らかです。


 ペット市場はまだまだ成長している巨大市場のため、パピーミルを法や規制で閉鎖まで追い込む事はまだまだ時間がかかりますが、先導している州の影響を他の州も受け、全州への流れとなったとき、日本の市場へも影響が出始めることとなるでしょう。

 今のアメリカは、効率と利益のみを優先させ、動物の健康状態が無視されている古き体質から、急ピッチで抜け出そうとしている真っ只中な状況のように思えます。 

 

M-Cross International Corporation Column

米国トーランス市に拠点を置くMCICが、米国進出のノウハウや独自の市場分析をコラム形式にて情報を掲載

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