アメリカ進出でアメリカ企業と提携するときに、その企業の価値をどう見るか
アメリカ進出において、アメリカ企業との提携において、その企業の持っている価値と、こちら側が持ってる価値を比較して、どのように価格や内容で提携するのかを見定めなければなりません。
その時に、米国側と日本側で価値の考え方が違うと、提携交渉からつまづきます。
違うモノサシで価値を測り、判断していては、提携で不利益を被ることになるかもしれません。
では会計上の価値判断では、どのような考え方があるのか?これを知っておく必要があります。
■取得原価主義会計
これは取得した当時の価格を基準として、資産や負債を評価する会計です。
実際にお金をやり取りして得たもので損益計算書(Profit and loss)が作成されますので、貨幣の金額という客観的にも信頼性のある数値となります。
客観的ということは、偏った見方ではなく比較的公平な見方ですので、一般に課税当局はこの処理方法となっております。
税金の判断は公平な考え方がよいためです。
しかし、賃借対照表(Balance sheet)は含み損益が表に出てきません。
賃借対照表とは、事業資金をどのようなやり方で集め、どのような形で保管されているのか?といったことを表します。
もし現金を借りて不動産という形で保管されているとき、購入時の価格(簿価)と、現在の価格(時価)の差額が発生します。
取得原価主義会計では、時価が表されていないため、今の価値で本当のところはどうなのか?といったことが解りにくいといった点があります。
■時価主義会計
資産や負債を時価で再評価する会計です。
そのため資産の現在価値の実態が掴めるとして、投資家が推奨しています。
しかし損益計算書は、会社を経営することで得られる損益のほかに、会社が保有している資産の時価変動に左右されます。
取得原価主義よりも、現時点での価値がわかりやすいです。
■日米の比較
日本は取得原価主義会計を取ってます。
国際会計基準は時価主義会計に準拠しているため、日本も国際基準の時価主義会計に変えようという流れがあります。
しかし、本当に時価主義が良いのでしょうか。
取得時よりも時価が上がっていると賃借対照表も含み益から、企業の価値が上がります。
その逆で、取得時より時価が下がってしまうと企業価値が下がります。
多くの企業の価値が下がれば、経営状態は同じでも採用する会計方式が違うだけで、景気後退に影響を与えます。
米国では取得原価主義に移行しているといわれております。
日米が逆の主義で行っていて、逆の方向に向かっているため、まったく嚙み合いません。
■市場変化が激しい時代
現在は、市場の変化が激しい時代です。
1~2年で市場が激変することも大いにあります。
1万円で売れるとの思いで作られた商品は、来年も1万円で売れるとは限りません。つまり1万円の商品がいくらになるのか?市場の変化が激しいだけに予測の精度が低下します。
小売りにおいては、店舗を保有していることが資産ではなく損失になるかもしれません。
これでは時価が曖昧になります。
株式は株式市場という皆が同じ価値と判断する市場があるため、時価が明確です。
不動産もまだ価値を判断しやすく明確です。
しかし、商品となると売る市場それぞれで価格が変わり、価値が曖昧となります。
時価主義は企業の鉛筆の舐め方や利益操作に任せた利益出しの恐れがあり、はっきりした企業価値が分かりにくい企業もあります。
これでは、M&Aで不利益を被る事になりかねません。
このような変化の激しい時代は、取得原価主義で明確な数値を把握して、それに加え時価を算定する基準(どんな考えで時価を決めたのか?)を明確にしたうえでの現在価値を判断する、しっかりとした知識と目利きが必要になります。
提出された会計上の数値だけを信じることなく、その数値を選定した根拠も含め、しっかりと情報をやり取りして、自分の考えを明確にして、提携時の不利益となることを極力回避しなければなりません。
それには、提携をする側、される側の両方の資質が問われます。
国や文化は違えど、人対人の関係が重要だと考えます。
行きつくところはやはり、コミュニケーション能力かもしれません。
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